ヤマトとアマゾンの交渉、ECのサービスレベルは後退するだろうか

 

私のために、ヤマト運輸とアマゾンがもめるのは胸が痛む。

もちろん、私のためだけではないが。

Amazonを頻繁に利用する1人として、クロネコのドライバーさんにいつもお世話になっている者として、ヤマト運輸がアマゾンに対し、運賃値上げと荷物の総量抑制を交渉しているという現状は、とても残念だ。

ダイヤモンドon lineの報道によると、17年9月の契約更新を控え、ヤマト側は荷物あたり1.7倍の運賃値上げと、荷物総量の2割強にあたる分の削減を要請しているとか。

現状、ヤマト運輸にできないことは、国内のどの配送事業者にもできない。なにせ佐川急便が投げ出した取引を、ヤマト運輸が拾ったくらいだ。ヤマト以外のどこかがやるとしても、それはサービスレベルの低下でしかない。正直、Amazonで購入した商品を運んでくる業者がヤマトでないと、がっかりする。クロネコに勝るサービス品質はない。

アマゾンがこの要請をどう受け止めるか分からないが、配達までのスパンが延びたり、エンドユーザーにもコスト負担を要求してくるとなると、ネット通販の買物体験としては現状からの後退と言わざるをえない。残念なことだ。

 

ニーズの存在は明確なのに、ヤマトは手を伸ばせない


 

ヤマト運輸にとっても、アマゾンへの要請は事業としての後退であり、少なからずリスクも伴う。宅配のニーズがあることは明白なのに、それに対応できる体制が整わないためにリーチを諦めるというわけだから。

当面、ドライバーの労務環境を改善するのが優先としても、決して前向きな取り組みではない。拡大するニーズを前に、保守的に構えざるをえないとは、残念な状況だ。

需要と供給に対するこのような間隙は、必ず意欲的な挑戦者が埋めにくる。

クロネコが埋められないB to Cの宅配需要を埋めるのは、既存の同業者かもしれないし、アマゾン自身かもしれないし、新規参入者かもしれない。

ヤマト運輸の物流システムは再構築を余儀なくされている。どこに無理があったかを研究したうえで、新参者はより合理的な状況からスタートを切れる。

 

消費者は配送料の負担を受け入れない。何をトレードオフできるか?


 

新参者は、個配の物流をどのようにデザインするだろう?

ネット通販のB to Cに特化するとか、宅配そのものを諦め、家ではなく宅配スポットに特化して配送網を構築するとか? いずれにせよヤマト運輸で無理が生じているポイントを検証し、そういう部分をいっそのこと捨ててしまって新しい配送モデルを構築するかもしれない。

ヤマト運輸には、どうしたってC to C領域を捨てることはできないし、宅配を諦めるわけにもいかない。しかしB to Cの需要が伸び続けるなら、そこに特化するアプローチもありえるのではないか。手間とコストがかさむ宅配をしない決断もありかもしれない。

自動配送車などの技術的なイノベーションを待たずとも、現状のサービス品質からトレードオフをすることで、格安運賃を可能にする新規ビジネスの余地がきっとある。

少なくとも、消費者は配送料の負担が増えることを受け入れない。また、必ずしも自宅に運んで欲しいと思っているわけでもない(場合もある)。

配送スポットは、今はコンビニや駅、スーパーにも広がっているけど、自動販売機を置き換えて新たな宅配スポットにするとか、設置場所の可能性はまだありそうだ。

そう、自動販売機のロケーションは魅力的ではないかしら。

 

自販機は生活インフラとして必須か? 置き換えどきでは


 

日本自動販売システム機械工業会の統計によると、飲料(16年は前年比2.9%減)もタバコ(同9%減)も、自販機の台数は減っている。

自販機総数365万台の7割近くを飲料用が占めているが、収益は厳しい。自販金額は4.9%減で数量の減少率よりも大きく下げている。つまり1台あたりの売上が落ちている。タバコも同様で、売上はなんと18.1%減の危機的な状況。喫煙は撲滅して欲しいと思っているから、私にはむしろ good news な数字だが。

さて、飲料を購入するスポットなら、コンビニでもスーパーでもドラッグストアでも、オーバーストア気味に近場にあるわけで、しかも今や自販機で飲料を買うのが一番高くつく。売れなくなるのが当然だ。

とはいえ、住宅街の道沿いのいいところに置かれている場合が多い。自販機オーナーに、宅配ボックスへの切り替えを提案する事業者が出てきたらいいと思う。

ヤマト運輸が労務環境の改善を優先するのは仕方がない(のかもしれない)。ただ、その間にネット通販のサービスレベルが低下するとしたら、重ね重ね残念なことだ。

もしもヤマトの間隙を縫って新規参入者が台頭するとしたら、ヤマトの経営にとっては本当に残念なことになる。一方、ヤマトが体制を立て直すまでサービスレベルが低下したままだとしたら、消費者にとってはさらに残念なことだ。個配の物流市場は、大手の体制、意向次第ということになってしまう。


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