映像による商品プロモーションの近未来

 

商品の魅力を伝える手段として、やはり動く映像の訴求力は活かしたいと、メーカーやリテーラーは考える。テキストや静止画と比べてより重要、かどうかは一概に言えないが、表現手法が異なれば伝えられる内容も変わり、動画でしか伝えられない魅力は多くの場合、静止画やテキストよりも強い印象を残す。

 

レミーマルタンの世界をMRで体験

 

ブランドを訴求する手法の1つとして、まず最新と言えるのはMR(Mixed Reality:複合現実)を活用したプロモーションだろう。

洋酒・コニャックの「レミーマルタン」が、マイクロソフトのMR端末「HoloLens(ホロレンズ)」を使ったブランドMR体験を世界規模で展開する。

ところで、いやMR(複合現実)って何よ? という話にはなる。

似たような折に出てくるVR(バーチャルリアリティ:仮想現実)やAR(Augmented Reality:拡張現実)と何が違うの? ということで、整理すると以下のようになる。

 

  • VR(仮想現実):CGの世界 ex. ゲームの映像など
  • AR(拡張現実):現実の映像にCGをプラス。ex. ポケモンGOの映像
  • MR(複合現実):ARをよりインタラクティブにしたもの

 

ARとMRの区別が必要なのかどうか飲み込めないところもあるけど、つまりは現実の映像にCGを織り交ぜて何かしようという表現方法だ。

レミーマルタンの場合、イベント会場か何かで視聴者はマイクロソフトのMR端末を装着し、商品がいかに「比類なきルーツ(ROOTED IN EXCEPTION)」を有しているか、原料となるブドウを育てる土壌環境などからモノづくりのこだわりを見ることができる。

マイクロソフト「ホロレンズ」

 

MRならではのポイントは、ホログラフの映像を見ながら、実際に商品の香りや味わいを確かめられることにあるという。ブランドストーリーを見ながら酒を味わう。つまり映像による視覚・聴覚と、レミーマルタンを飲むことによる味覚・嗅覚の連携・・・。これは美味しく感じるに決まっている。

ただ、別にMRでなくても、会場のスクリーンに映像を流せば効果は同じではないか? と思わないでもないが・・・。それでは話題性に乏しい。

1台55万円もするMR端末を使って、しかも1台につき1人しか体験できない映像を提供することがラグジュアリーなのかもしれない。

この企画は世界を巡回するそうで、日本での日程は未定という。

 

Retubeの技術 プロモ動画から直で販売サイトへ

 

しかしMRを使ったプロモーションなんて、まだ特異すぎる。そもそもマスにアプローチできないし、販促効果も得られにくそうだ。

もうちょっと現実的で、動画を活かす技術としては目新しいものというと、イスラエルのベンチャー企業「Retube」が提供する動画インタラクティブ技術だろうか。

再生中の動画に商品のポップアップが表示され、クリックすると販売サイトに遷移するというもの。魅力的な動画プロモーションからダイレクトに商品の詳細情報の取得、さらには購買に続くルートを用意する。

以前紹介した「+genic(ジェニック)」は、SNSに投稿された画像(静止画)から気になる商品をタップすることでダイレクトに販売サイトに遷移した。「ジェニック(+genic) SNSでショッピング。ECの買物体験が変わる?」 Retubeはその動画バージョンといった感じで、プロモーション映像と販売を密接につなごうとする工夫だ。閲覧者は動画で興味を持ったらすぐに、その商品名が分からなくても販売サイトに移動して検討できる。

Retubeのデモ映像の1つでは、口紅の複数のカラーをモデルの動画にインタラクティブに反映させられる。これもまた動画じゃなくて静止画でもいいのでは・・・、という気がしないでもない。そこは耳目を集めてこそのプロモーションだから、おお! と思えるならいいのかもしれない。

 

Retubeのインタラクティブ動画のデモ画像

 

Retubeは、日本のベンチャーキャピタルから出資を受けた企業で、日本での展開はこれから本格化するという。既存の動画を簡単に通販機能の付いたものに加工できることをサービスの売りとしている。

 

プロモ動画ならではのハードルもある

 

動画を使ったプロモーションが表現手法として魅力的なのは分かるが、モバイル端末での視聴が一般的な環境のなか、動画はデータ容量が静止画と比べても格段に大きくなることが気にかかる。上限が決められたパケット定額の負担になるし、再生に時間を要するのも考えものだ。インタラクティブ動画にせよ、VR・AR・MRにせよ、静止画でもいいのでは? と思われるようでは不十分なわけで、その表現手法ならではの特色を踏まえたコンテンツに仕上げる技量も問われる。

しかし静止画による商品の訴求では差別化が難しくなった現状では、動画を使ったアプローチは避けられないのかもしれない。

それにしてもAR・MR系の場合、仮装も同然の端末を装着しなければならないうちは一般化しそうにない。ホロレンズは、むしろスタイリッシュにまとめた方だと思うけど・・・。

屋外ではもとより、自宅にだってあれを置くようになるとは思えない。人型ロボットよりも普及へのハードルは高いと思う。ウェアラブル端末をうたうなら、せいぜいメガネくらいの大きさ・重さを求めるだろう。

映像処理はスマホに任せてBluetoothを使用し、顔に装着するものにはモニターと操作機能だけにするとか、軽量化を実現して欲しいものだ。 音を処理する方法はそのようになっており、耳に装着するイヤホンは軽く仕上がっているように。


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