ユニー・ファミリーマートHDは17年9月、伊藤忠商事との共同出資でフィンテック事業を手がけるUFI FUTECH(UFIフューテック)を発足させた。
この新会社、独自の電子マネーやクレジット、ポイント、ID等をビジネス領域にするといい、報道によると1年以内に具体的なサービスの実現を目指すとしている。
独自の電子マネー、クレジット、ポイント。いずれも従来はT会員のエコシステムでまかなってきた。T会員プログラムから脱却するわけではないにせよ、ここにきて自前のシステム構築に乗り出すのはなぜだろう?
汎用型だけでなく、自前の基盤も必要
ファミマの現状、ポイントやデータ基盤など顧客とのCRMに関わるものは以下のようになっている。
- ポイントプログラム:Tポイント
- 使える電子マネー:Tマネー、交通系、iD、QUICPay、WAONなど
- クレジットカード:ファミマTカード
- 会員データベース:T会員
T会員をベースに、顧客とのつながりに関することは、言ってみれば借り物でまかなってきた。
汎用型のポイントプログラムのメリットはあるとしても、自前でないが故の不都合もなくはないはずだ。意思決定のスピードとか、加盟している他チェーンにポイントが流出する場合もある。コンビニは流入する方が多いと思うが。
それに「T」はTのブランドであり、ファミリーマート独自のブランドイメージにはなり得ない。そこはセブン&アイのnanacoや、イオンのWAONとは違う。
便利に使える汎用型のポイントや決済ツールが有効な一方、自社の顧客を囲い込むためのハウス型の決済&ポイントツールは、イオンやセブン&アイに限らず、多くのチェーンストアが追求している。そのハウス型の会員基盤づくりに、ファミマも乗り出す。
自前ではないといっても、ファミマはTポイントの運営会社に出資もしている。それでも自前に乗り出すほど、ハウス型の仕組みも必要なのだろう。
汎用型とハウス型は、二者択一の選択肢ではなく、一方があるからこその他方といった関係にある(「電子マネーの双子」 参照)。ファミマが改めて自前の開発に取り掛かるのは不思議なことではなく、然るべき時期が来たということだ。
流通業の第3極へ、具体的な一歩
ユニー・ファミリマートHDは、統合を発表した15年の時点から流通の第3極の形成を標榜していた。しかしこれまではコンビニ事業のサプライチェーンならびにシステムなどの統合や、加盟店の看板変更に忙殺されていた。旧サークルKサンクスからの転換は、今も進行中だ。
また、ユニーのGMS事業を再構築する難題もあったが、それは先日の資本業務提携によりドンキホーテHDというパートナーを得て、今後の方向性を固めることができた。
統合プロセスの難所を乗り越え、いよいよ第3極の形成に向けた具体的な動きが出て来たと感じる。
小売業の強さは個々の商品やアソートメントの妙といった売場の魅力に負うところが大きいとしても、顧客の囲い込みにつながるペイメント&ポイント、顧客データベースが重要なことも疑いようがない。
自前の仕組みで、汎用型とは違ったメリットがある顧客囲い込みの環境を整えていく。2年目に入った新生ファミマは、UFIフューテックの設立を端緒に、統合プロセスから一段階上のステップに踏み出そうとしている。