食品スーパーがネットに負けない理由

本も電化製品も衣服も鞄も日用消耗品も米や水も、たいていのものはネットで買う。

持ち運ばずに済んで便利、それもある。出かけなくていいから時短、そんなメリットもなくはない。

それより重要なのは、ネットの方が欲しい商品を探しやすいということだ。

品揃えと価格でリアルに勝るネット
欲しい商品がありそうな期待値と価格への信頼感



世の中にどんな商品があるか、こだわりを踏みつぶすまで調べることができて、豊富な選択肢の中から選ぶことができる。商品を探し、選ぶ楽しさという体験において、ネットショッピングはリアル店舗より優れていることが多い。そして価格面でも、ネットに分があることが多い。

欲しい商品が見つかる期待値が高く、価格への信頼感もあるからネットを選ぶ。この理由は、ちょっとやそっとではひっくり返らない。

もはや本屋には立ち読みに行く価値もない。まれに行くこともあるが、楽しみで行くというより、Amazonで中身を確かめられないレアなケースに、しぶしぶ行くのだ。家電量販店は現物を確かめに行くところで、買う場所ではない。ドラッグストアやスーパーで購入していた紙類や水などのかさばるものは、ちょっと高くてもネットで買う。車を使わない生活だから、そこは利便性も含めての判断になる。

欲しいモノが見つかることへの期待値と、価格への信頼感からネットでの購入を選ぶのであって、利便性で選ぶのではない。利便性は、品揃えと価格という買物体験の本質的な価値に付随してくるサブ的な要素だ。

品揃えと価格の両面で、リアル店舗がネットを上回るのであれば、もちろんネットで購入する。出かける手間も持ち帰る労力も、欲しい商品を安く買う魅力の前には犠牲に捧げる。

そんな数少ないカテゴリーが、最も購入頻度の多い食品だったりする。生鮮食品や惣菜を購入するために毎日のように店におもむくが、この手間をネットショッピングに置き換えることはない。リアル店舗の方が品揃えと価格の優位性が明らかにあって、この買物の魅力はネットで代替できないからだ。

リアル店舗は同じ商品の個体差を選べる。
アボカドのコンディションは個々に違う。

生鮮品とは野菜・果物、魚、肉のことで、惣菜は揚げ物や弁当、寿司などだ。

生鮮品について言えば、ネットショッピングでは同じ商品の個体差を選べない。たとえばアボカドだが、同じ場所に積んだ同じ値段の商品でも、コンディションはけっこう違う。ネットスーパーで頼めば、きちんと選んでくれる? そうかもしれないが、選ぶ楽しさというものがある。今日食べるか、2〜3日後になるか、それによっても選ぶコンディションは変わってくる。

しゃぶしゃぶ用の肉にしたって、脂身と赤みのバランスには好みがある。ネットで商品名をクリックするのは1択でしかない。ステーキ肉でも刺身でも切り身でも同じことが言える。店頭にあるものという制約の中でも、選べる選択肢はリアル店舗の方が多い。

惣菜は、そもそもネットで買いたいと思う人が少ないだろう。出来合いのものは、すぐに食べたいから買うのであって、朝に注文してその日の夜とか、または翌日に届くとして、そのときに天ぷらが食べたいかコロッケか、寿司にするか焼肉弁当かなど決めようがない。まして出来てを届けるのは不可能だ。比較するなら、宅配ピザの出来たてレベルを超えることはあり得ない。それより数段劣る出来たて感のものが、注文から最短でも半日のタイムスパンで届くことに価値を見出すのは難しい。スーパーでもコンビニでも、腹が減ったタイミングで店に出かければ30分とかからずに解決することだ。

日用消耗品とか常温で運べる加工食品などは、際限なく種類を増やせるという点ではネットの方が品揃えは豊富だ。ただ、商品の利幅が小さいことから、まとめ買いにしないと輸送コストがペイできなかったりする。そうなると消費者にとっては購入単価が上がり、自宅にストックするスペースも余分にいる。けっきょく必要になる都度、スーパーで購入した方がいい商品も多い。

生鮮・惣菜の在庫は、センター集中ではなく
個店に分散する方が合理的

消費者の手元に商品を届ける物流の仕組み、つまりロジスティクスを考えても、一般的には各店に分散させるより、在庫を1ヶ所にまとめて管理できるネットの方が効率的な場合が多い。

しかし食品だけは、ネットよりもリアル店舗の方がロジスティクスが最適化されている。

品質劣化が早い生鮮品を1ヶ所に大量にストックしてもさばき切れない。多くの人は近くの店で鮮度のいいものを買おうとするから、売る方は顧客の近くに店を構え、さほど広くない商圏で当日にさばき切れる範囲のストックに止めた方が合理的だ。

ロジスティクスが最適化されているからこそ、加工食品や日用消耗品も、ネットで買うより小さい単位で安価に買える。

温度管理の問題もある。冷凍品はもちろん、ヨーグルトや豆腐など要冷の商品群も、生鮮も惣菜も、温度管理が必要だから運ぶ仕組みがややこしくなるうえ、宅配ボックスに置いとくわけにはいかないので、受け取る方も確実に在宅で受け取らねばならない。

リアル店舗の方が選べるし、安いし、温度管理に伴う手間も軽微なのだから、生鮮・惣菜を買う場所は今もリアル店舗であり続ける。常温で運べる加工食品と日用消耗品は、ごっそりネットにシフトする可能性はある。しかし生鮮と惣菜は、物理的な距離とリードタイムを縮められる仕組み、どこでもドアくらいファンタジーなレベルの革新が起こらない限り、品揃えと価格の魅力で、リアル店舗の優位性は変わらないだろう。

ネットスーパーで何を売るか。
スーパーであることに縛られない発想が必要では?

だからリアル店舗の食品スーパーは安泰かというと、そんなことはない。常温の商材がごっそり持って行かれたら、やっぱり店は立ち行かなくなる。

そこで防衛的な意味でもネットスーパーに取り組む場合、主要領域である生鮮・惣菜が売れるとは考えずに、常温品をいかに売るかという発想から事業をデザインするといいのかもしれない。ネットスーパーという言葉に縛られると、どうかして生鮮・惣菜を売らないといけないような気がしてくるが、売れないものは売れない。店の方が選べるし、価格だって宅配のコストが余分に加わる分、高くなることはあっても安くなる道理はないのだから。



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