J.フロントが目指す上野御徒町で商うスタイル

 

オープン時の立地はベストでも、時と共に街も人も変わり、やがて商圏そのものが変質してしまう。そうなると、店を構えてしまったリアル店舗は苦しくなる。コンビニのようにリプレイスができる業態ならまだしも、百貨店ほど広域商圏を必要とする業態ともなると身動きが取れない。

そして百貨店の整理が続くわけだが、今でも好立地に構える店舗もある。動くに動けない業態ではあるものの、動く理由もない店がある。そうした店は、時代に合わせて中身を変えることにより存続を目指す。このような事例が直近で2つある。松坂屋上野店とそごう千葉店は、現在の商圏ニーズを見つめ直し、店舗機能を刷新する。

 

松坂屋上野店 近隣で誰が何をしてるか見直す


 

手前が松坂屋上野店の本館、奥が上野フロンティアタワー(イメージ図)

東京・台東区の松坂屋上野店は、江戸中期の1768年から同じ場所で営業している。これほど長期にわたる店舗運営だから、時代に合わせて変化を続けてきたのは当然のことだ。

同店は、直近では本館と別館の二部構成になっていた。東京メトロ銀座線・上野広小路駅に直結し、上野・御徒町エリアのほぼ中央に位置する。さらに秋葉原にも徒歩圏内という好立地だ。

しかし百貨店一般の傾向と同じで、客層はシニアへの偏りが顕著だった。私もこの界隈で12年ほど働いていたが、店内に足を踏み入れたことは数えるほどしかない。

ただ、上野御徒町エリアにはオフィスも多い。上野広小路駅から徒歩5分程度の湯島天神あたりまで来れば文京区で、マンションだけでなく戸建も多かったりする。上野と秋葉原の中間に位置することで観光客も急増している。

百貨店の顧客はシニア偏重でも、街にはオフィスワーカーも、子育て世帯も、観光客も外国人旅行客も多い。

それら全てを松坂屋上野店に取り込もうというのが今回のリニューアルのねらいで、商業施設を核に地域との共栄を目指す「シタマチ.フロント」計画と銘打つ。

シタマチ.フロント計画では、リニューアルした本館と、別館を建て直して11月に開業する上野フロンティアタワーに加え、隣接するスポーツ用品等の専門店館、その前方に設けたJR御徒町駅前の広場など、上野広小路から御徒町までの自社不動産をフル活用する。

 

百貨店+パルコ+シネコン+オフィス

 

上野フロンティアタワーは、地下1階が松坂屋の食品フロア、1〜6階がグループのパルコが運営する新屋号のPARCO_ya、7〜10階がTOHOシネマズのシネコン、それから上層の10フロアはオフィスとして貸し出す。

本館とフロンティアタワーの相乗効果で、客層は以下のように広がる。

 

  • 松坂屋の顧客に加えてパルコで若い客層を取り込む。
  • 駅近立地を活かしてオフィスを誘致。さらにランチ需要などの物販につなげる。
  • 界隈にはなかったシネコンによって、新たな来店動機を創出。

 

本館とタワーの構成イメージ(リリース資料より)

 

PARCO_yaのターゲットは、団塊ジュニアを中心に30〜50代と設定する。既存のパルコに比べ、「ちょっとおしゃれな おとなのたまり場」がコンセプトだ。

パルコが2012年にJ.フロント リテイリングにグループ入りして以来、百貨店とパルコの共同出店は今回が初めてのケースとなる。

PARCO_ya ロゴイメージ

J.フロント リテイリングの山本良一社長は会見で、「以前のような百貨店2棟も検討したが、パルコによって若い世代を取り込むことが可能になると判断した。母娘が一緒に訪れ、母は松坂屋、娘はパルコで楽しんでいただければいいと思う。そうしたことが可能な商業空間になることで地域の発展に貢献できる」と語った。

パルコの牧山浩三社長は、「そもそもパルコは百貨店に隣接する立地に作ることから始まった。実際、百貨店が近くにある方が店の効率は高い。既存の顧客基盤を活かすうえでも、今回のPARCO_yaは従来のターゲットより上の世代にも対応する」としている。

 

インバウンドの獲得は観光起点で

 

若年層、オフィスワーカー、シネコン利用者といった新規客層に加え、もう1つ重要なのが観光客の取り込みだ。2016年には上野周辺に304万人の外国人旅行客が訪れたそうで、2年前の1.6倍という。外国人だけではない。日本人の観光客も相当なものだ。

上野松坂屋として、観光客の獲得に向けた取り組みを象徴するのが「上野が、すき。」として展開するさまざまな仕掛けだ。同名のウェブのコミュニティサイトと連携するもので、本館では2階に「上野が、すき。カフェ」、7階に「上野が、すき。ギャラリー」を展開する。ギャラリーでは、地域性をテーマにアート&カルチャーの情報発信に取り組む。

上野フロンティアタワーの地下1階には、「上野が、すき。ステーション」を展開する。地域の老舗やクリエイターとのコラボでオリジナルグッズ等を展開するほか、英語を話せるスタッフが常駐して観光案内や旅行客向けのワークショップを開催する。

 

上野が好き。ステーションのイメージ図

 

外国人旅行客を取り込むとは、すなわちインバウンド需要の獲得ということだが、松坂屋上野店の仕掛けは、ストレートに買物需要への対応ではない。あくまで観光を起点としている。J.フロント全体で見た場合、訪日旅行客による買物需要の取り込みは、電車で10分ほどしか離れていない銀座のGINZA SIXが主戦場になるという。

上野松坂屋は、上野御徒町の特性を踏まえ、そこを訪れる人のニーズを全方位で取り込もうとしている。従来の店舗機能では足りない部分を、PARCO_yaやシネコン、「上野が、すき。ステーション」等で補完する。

 

そごう千葉店 ファッション以外の強化で需要開拓


 

そごう千葉店は、20〜30代女性に特化していたファッション専門館ジュンヌを改装し、雑貨やインテリア、書店、カフェ、サービスの専門店を多数、導入した。

 

六角形の新ロゴを採用した新生JUNNU

 

客層拡大の取り組みは、次のようにまとめられる。

 

  • ファッションから衣食住トータルにカテゴリーを拡大したことで、ターゲット女性の利用シーンが広がる。
  • 女性客だけでなく、その子供や家族など来店する客層そのものが広がる。
  • 別館でコト体験。本館の物販と相互補完

 

具体的な取り組みについては「そごう千葉店JUNNU(ジュンヌ)改装。すべてがフォトになる」で触れている。

女性の利用シーンはファッションだけじゃない。また顧客は女性だけじゃない。この視点から、千葉駅周辺のニーズを掘り起こす。


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