エスキュービズム、単身向け家電市場の開拓へ「ルーム家電」を本格化

 

単身世帯の増加を背景に、あらゆる市場で適量・適正サイズの見直しが進んでいる。

食品分野で「少容量・小分け」が品揃えのベーシックとして確立したように、家電でも単身世帯をターゲットにした製品開発が進んでいる。

「おひとりさま家電」とも言われるこの分野は、ファミリー向けを中心に家電市場を形成してきた大手メーカーの間隙を縫うかたちで、新規参入者の存在感が目立つ。

  

ワンルームを家電で豊かに


  

エスキュービズムは8月以降、ロボット掃除機や炊飯器を順次、投入していく。

リビング仕様ではなく小部屋(ルーム)で使われることを想定し、機能とデザイン性と値ごろ感のコストパフォーマンスで差別化を目指す。

薮崎敬祐社長は、少人数世帯に向けた自社製品を「ルーム家電」と定義する。大手が得意とするリビング向けの家電とは使用される空間を分けたうえで、十分な機能と上質なデザインで「ENRICH THE ROOM」(部屋を、ひとつ豊かに)のコンセプトを追求する。

「一人暮らしのワンルームや寝室など、6〜8畳の部屋にフィットする家電を目指します。ただ、世代的には若年層とシニアの両極端な市場であるため、消費者の価値基準が多岐に分かれます。そこで値ごろ感を重視しつつ、ENRICH THE ROOMのコンセプトによって当社の方向性を明確にしました」(薮崎社長)

薮崎敬祐社長

小さな部屋をひとつ豊かにするための価値軸は、次の5つに細分化される。

  1. 小型・薄型であること
  2. 部屋を彩る
  3. お手頃価格、納得品質
  4. テクノロジーで家電を変える
  5. オフィスも快適に

 

8月に発売するロボット掃除機(想定価格14,800円)は、厚さ3cmで家具などの下に入り込む。1回の充電で8畳ほどの部屋を十分に掃除するが、バッテリーが切れても自ら充電器に戻ることはないという。

途中でバッテリーが切れた場合、部屋のどこかにいる掃除機を探す必要がある。このあたりは限られたスペースでの十分な機能と価格抑制のトレードオフとなっている。

厚さ3cmのボディを実現したロボット掃除機

 

また、10月頃に発売予定の炊飯器は7000〜8000円前後の想定価格で最終的な調整を進めている。炊飯機能は価格帯の水準を超えるものではないとしつつ、空間に置かれたときのたたずまいで差別化する。

カラーにこだわった炊飯器

 

ネットの直営サイトで売れ筋のCDプレーヤーは、8月にフルリニューアルする。現行品と同じ5000円を切る価格帯で、5色のカラーバリーエションを揃える。女性やシニアには今もCDプレーヤーの需要があるという。

CDプレーヤーを5色のバリエーションで展開

 

家電はスイッチレスに


 

テクノロジーで家電を変えることについて、薮崎社長はIoTをベースにした「スイッチレス」を最終的なかたちとする。

「今は家電のリモコンが部屋にいくつもある状況ですが、いずれはスマホに集約して操作するようになります。家電のIoT化は確実にその方向に進むはずですが、現時点で当社が開拓しようとしているルーム家電に搭載することは、コスト的に現実的ではありません。IoT化の基礎モジュールが確立されてから取り組もうと考えています」(薮崎社長)

また、オフィス需要への対応は、会議室などルーム的な空間を想定している。

既存製品のワンドア冷蔵庫など、ルーム家電とオフィス需要には親和性のあるものが見られるという。

オフィス向けの新製品として、アンドロイドOSを搭載した会議室用のモニターや、デザインを見直したプロジェクターなどの開発を進めている。

 

レコルト、バルミューダ
少人数向け家電はライフスタイル商品


 

ウィナーズが展開する調理家電シリーズ「récolte(レコルト)」は、住空間に調和するデザイン性と、女性にとっての使いやすさにこだわる。多機能であることが便利さではないと考え、製品設計では基本的に、その調理機器のコア機能に絞り込む。

8月に発売するオーブントースター「スライドラックオーブン デリカ」(希望本体価格6,500円)は、トースト2枚を縦に並べる設計でキューブ状のコンパクトサイズを実現し、焼いた料理をラックごと取り出せる独自デザインとなっている。

17年8月に発売するトースター「スライドラックオーブン デリカ」

 

シリーズ製品は、ほとんどが1万円を切る価格設定となっている。使いやすさを重視するコンセプトには、買い求めやすい価格に抑えることも含まれる。

機能・デザインともにハイエンドで人気のバルミューダも、今年発売した炊飯器「BALMUDA The Gohan」(本体価格41,500円)が3合炊きであるように、キッチン家電は少人数世帯に合わせた設計がベースのようだ。「BALMUDA The Pot」(同11,000円)も600mlで、1回に淹れられる量は2〜3杯に限られる。

これらの例から分かるように、世帯の少人数化に合わせた家電は、ただ小さい電化製品というだけではない。スペック重視で発展してきた従来の家電製品とは異なり、住空間の一部であることや、使う人の価値観を踏まえたライフスタイル商品となるように開発されている。

ライフスタイル商品、すなわち固有の価値観に合わせて個性を尖らせた商品であることも、スペック重視で発展してきた大手メーカーを中心とする家電製品へのアンチテーゼになる。

おひとりさま家電である以上、個々の価値観に合わせて尖っていくのは自然なことだ。ファミリー全体への最適化を求められる家電とは性質が異なる。


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