電子マネー、チャージの回り道。最短ルートをなぜ行かない?

 

プリペイド式の電子マネーは、当然ながらチャージした金額分しか使えない。オートチャージ機能を付ければ自動で充足してくれるが、チャージの手順をはさむことに変わりはない。チャージしなければ使えないわりに、チャージする手間や障害がわりとある・・・、という話。

電子マネーにチャージする方法は、結局のところ3つしかない。現金か、クレジットか、預金口座か。

最も手間がかかるのは現金チャージ。現金を用意しなければならない。

便利なのはクレジットチャージ。ただ、クレジットカードを持つことが前提であり、障害と感じる人もいる。

預金口座からチャージするのが最もシンプルなように思うが、ほとんど対応していない。全くないわけではないから、不可能ではないはずなのに。

 

チャージとは、預金で電子マネーを買うこと


 

自社の電子マネーを使ってもらうために、運営会社は、利用客に自社マネーをチャージしてもらわないといけない。

チャージとは、それがどのような方法を取るにせよ、銀行口座の預金を特定の電子マネーに変えることだ。通貨(預金)を使って、特定の電子マネーを購入すること、と言い換えてもいい。

考えてみると、電子マネーも金融商品の1つであることは間違いない。ほとんど1円=1電子マネーにレートは固定されているが、大概の電子マネーは、それを使って購入するとポイントが付与される。ポイント換算のレートはいろいろで、大抵は普通預金の利子よりも還元率が高い。

だからこそ、電子マネーで買物しようという動機が生まれる。5万円、10万円とチャージできるものもある。貯蓄ではないにせよ、銀行に預けておくよりも多くのものを購入できる金融商品だ。

 

預金から何かを挟まないと電子マネーにならない


 

繰り返しになるが、電子マネーは購入(チャージ)しないと使えない。それは、預金を電子マネーに変えることを意味する。先にもふれたように、預金から電子マネーに変える道すじは複数ある。

 

①現金でチャージする。

現金チャージはいかにもダイレクトなようだが、しかし現金とは何か、立ち止まって考えてみると、預金を日本銀行券に変えたものだ。ATMなどで預金口座から現金を引き出さないと、現金を手にすることはできない。

けっきょく、預金から電子マネーの交換過程に、現金という1クッションが入り込むことになる。手間でしかない。

 

②クレジットカードとひもづけてチャージする。

預金と電子マネーの間を、クレジット決済のインフラで取り次ぐ。電子マネーには即座にチャージ金額が貯まり、預金口座から引かれるのは後日のクレジット決済日になる。オートチャージ機能も付けられる場合が多く、利便性が高い。

ただ、クレジットカードを所有するというハードルが生じてしまう

ほかのチャージ方法がないからクレジット経由が重宝するとしても、1クッション入っているのが省けそうな気もする。もっとも、利用者からすれば、クレジットからのチャージでポイント発生、電子マネーの決済でさらにポイントと、ポイントが2重にもらえる場合がほとんどで、回り道をするメリットはある。

 

③銀行の預金口座からチャージする。

最も簡潔なルートに思えるが、実施しているケースはクレジット経由と比べ極端に少ない。

たとえば、Suicaで対応しているのは3行(みずほ、三菱東京UFJ、じぶん銀行)だけで、それもモバイルSuica限定のサービスだ。

楽天Edyは、17年9月上旬の時点でネット銀行が1(楽天銀行)、都市銀行が3(三井住友、みずほ、りそな)、ゆうちょ銀行、さらに30行の地方銀行からチャージできるが、これもおサイフケータイ搭載のスマホに限定されている。

WAONは、イオン銀行のATM限定だが、預金口座から直に電子マネーカードへチャージできる。ただ、モバイル端末に対してはクレジットか現金でないとチャージできない。つまり預金口座からの直接ルートはない。

nanacoにもセブン銀行のカードと一体型がある。一体型でない場合も、セブン銀行のデビットカード決済と別のnanacoカードのポイントをひもづけすることはできるが、電子マネーそのもののチャージはできない。オートチャージやモバイル対応はクレジットカードだけになっている。

銀行口座からの直接チャージがこれほど限定的なのは、銀行そのものがペイメントサービスに力を入れてこなかったせいだろうか。基本的に、クレジットカードがないとキャッシュレスにはチャージできない。

 

LINE Payは万人のキャッシュレスを見据える


 

しかし、問題は銀行だけのことではないと、LINE Payの取り組みを見ると感じる。

LINE Payは、初期設定の後はアプリの操作だけで銀行口座からチャージできる。17年8月末時点で提携銀行は47行。楽天Edyを上回る。コンビニでの現金チャージにも対応している。ただしクレジットチャージには対応していない。このあたりにどのような考え方があるのか気になるところだ。

決済金額の2%還元という高レートで、LINE Pay口座には本人確認などの条件を満たせば最大1000万円もチャージできる。決済ツールだけではなく、個人間の送金もできる。まさにチャージ式電子マネーの新境地を開こうとしている。海外には同じSNSから始まって決済インフラを構築したWeChat Payのような先行事例もある。

LINE Payを見ていると、チャージ手段は現金とクレジットがあればよし、という環境ではなくなる気がする。カードをベースに作られた00年代の電子マネーと、最初からモバイル起点の電子マネーとの違いもあるかもしれない。

間に現金やクレジットを挟むとしても、通貨から電子マネーに変換する本質に変わりはない。それなら最短ルートは、預金口座と結びつくことだ。

クレジットチャージも実質的には預金口座と結びついているようなものだが、クレジットカードを誰もが持っているわけではない。クレジットカード保有者よりも銀行口座の方が多いのだから、これまであまり重視されてこなかったとしても、預金口座との直接ルートを広げる必要があるのでは。とりわけチャージ式の電子マネーには重要だろう。


Pocket
LINEで送る