電子タグ(RFID)「コンビニ1000億枚宣言」が宣言していること

経済産業省と主要コンビニ5社(上位3社のほかはミニストップとニューデイズ!)が、17年4月18日に「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を発表した。2025年までに、5社で取り扱われる年間1000億個の商品すべてに電子タグを取り付けるというもの。

電子タグは、バーコードの代替として期待されているもので、バーコードのようにいちいちスキャンする手間をかけずに、一括して読み取ることができる。店側にとってはレジ業務の軽減、顧客にとってはレジ待ち時間の短縮につながる。

しかも、バーコードと違って商品個々を識別できる。バーコードの場合、鮭おにぎりは1つだが、電子タグなら鮭おにぎりが10個あったとして、どの鮭おにぎりが売れたかまで把握できる。より緻密な商品管理がデータとして可能になることで、製造・物流・販売のサプライチェーン全体を合理化できると期待されている。

電子タグ自体は、10年くらい前から話題になっていた技術だ。バーコードより優れた技術であるにも関わらず、普及しないのはコストがネックになっているせいだ。電子タグを1つ付けるのに、現状では10〜20円もかかるという。

電子タグが普及すれば、製造コストも下がるとは言われてきた。しかし量産とコスト負担のどちらが先に鶏となるか卵となるか、決められないままズルズルきていた。



 

コンビニの宣言ながら、他者におんぶにだっこの留保条件

今回の宣言は、コンビニで使うから1000億枚作りましょう!との意味になる。ただ、コスト負担をコンビニがするわけではない。留保条件が2つある。

①「普及型」の電子タグの単価が1円以下になっていること。 

②メーカーが商品に電子タグを付け、商品のほぼ全てをRFIDで管理できる環境が整備されていること。 

①の単価引き下げは、タグ加工メーカーの努力次第だ。②を実現する費用は、メーカーの負担になる。

 

スタートとゴールだけのロードマップ
道中は目下、五里霧中。それも旅の楽しみか・・・。

経済産業省が策定したロードマップには、1000億枚を実現するための50項目にわたる課題と、その課題に対処する実施主体が列挙されている。

小売以外で並ぶのは、ざっと以下の通りだ。

ICチップメーカー、研究機関、タグ加工メーカー、国、業界団体、リーダライタベンダー、生産システムベンダー、SI事業者、サプライチェーンプレーヤー、スマホベンダー

コンビニが使うと宣言したくらいで、これだけの関係者を巻き込んで、技術革新を伴いながら電子タグの普及を実現できるものだろうか?

課題の解決期限も設定されているが、2018年と2025年の2パターンしかない。来年までに決められることと、ゴールの25年までに何とかしたいことの2パターンなのだろう。駆け出しとゴールだけの順路を、ロードマップと呼べるかどうかは微妙だ。

課題解決の期日を追えない理由の1つが、実現にはいくつもの技術革新を伴うからだと思われる。技術的なブレイクスルーがいつまでに可能かは、定かになりづらい。

主な課題として、経産省は表にまとめている。

経済産業省「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」 参考資料より

4つの課題の現状のうち、意志だけで克服できるのは「標準コードの普及」くらいのもので、残りは現状では普及は不可能というほかない。

 

バラ売り「うまい棒」に、1円かけて電子タグ。できるのか?

コンビニ5社が留保条件として挙げている「メーカーが商品に電子タグを付け・・・」も、疑問が多い。菓子メーカーの「やおきん」は、バラ売りの「うまい棒」1本ずつに電子タグを付けるのだろうか。また、技術的な課題として水と金属が電子タグの機能を阻害するとしたら、缶ビールなどはどうしたらいいのか。まだある。メーカーはコンビニ仕様で電子タグを付け、食品スーパーなどその他の業種にはタグなしのパッケージを用意するのだろうか。

コンビニに合わせ、いろいろな業種が一斉に電子タグ用にレジシステムを変える・・・。それも現実的ではない。

宣言が意味するところは、コミットメントでも計画でも目標でもない。目標と言うにも、コンビニ以外に負うところが多すぎる。とりあえず、花火を上げた? そんなところか。

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