楽天グループにはキャッシュレス決済のブランドが2つある。
電子マネー「楽天Edy」と、スマホ決済として拡大中の「楽天ペイ」。
どう違うのだろう? 一本化した方がいいんじゃないのと思って調べたら、そうも行かない違いがあることは理解できた。
楽天ペイとは、決済システムのこと
クレジットも電子マネーも楽天ペイで利用可能に
楽天Edyは電子マネーそのもの。楽天ペイには、バーコード式のスマホ決済ツールという側面もあるけど、多様なキャッシュレス決済に対応するシステムの総称だった。
店舗が楽天ペイを導入すれば、クレジットにも電子マネーにもスマホ決済にも対応できますよという、主に業務用の話だ。
楽天ペイというシステムは、17年9月時点ではクレジットカード、電子マネー(ICチップ)、アプリ決済(スマホ決済)に対応し、専用のカードリーダー(アプリ決済にはタブレットも必要)を提供する。
楽天ペイによって可能になる多様な決済手段の1つに、楽天Edyもある。両者はそういう関係だった。

楽天ペイのシステムの中に楽天Edyが含まれる関係。スマホバーコード決済の楽天ペイが別に存在する。
ブランド名がついた決済システムは、楽天ペイ以外にもいろいろある。SquareとかAirペイとか。Apple Payだって決済システムの1つだ。楽天ペイと楽天Edyは、Apple PayとSuicaの関係に近いとも言える。Apple PayとQUICPayの関係でもいい。なんだか、ペイが多義的に使われているから混乱する。
IC式は「Edy」、バーコード式は「ペイ」の区別
楽天Edyが決済手段、楽天ペイがそれを可能にするシステムという関係なら、スマホを使う「アプリ決済」の名称は、「楽天ペイのアプリ決済」と呼ぶよりも、「楽天Edyのアプリ決済」の方が区別しやすいように思う。システムと手段を分離するわけだ。
現状では、決済システムである楽天ペイの中に、決済の1手段としての「楽天ペイ」が存在し、同じ楽天ペイに2つの意味が込められてしまっている。
ただ、バーコード式スマホ決済が誕生する以前に、楽天Edyのスマホ決済には「おサイフケータイ」と、ほぼ同じ技術による「Android Pay」があった。これとバーコード式を区別するために、バーコードの方は「楽天ペイのアプリ決済」としたのだろうか。
つまり整理のポイントは、スマホでどう決済するかにかかっている。
スマホのうち、
- おサイフケータイ(ICチップ)なら、楽天Edy
- Android Pay(ICチップ)なら、楽天Edy
- バーコード決済なら、楽天ペイ
スマホ決済の技術基盤がICチップによるものなら楽天Edy、バーコードなら楽天ペイ。楽天EdyはもともとICチップを使った決済ツールだから、このような線引きになったと思われる。カードでもスマホでもICチップを使うなら楽天Edy。理屈は飲み込めた。しかし・・・。
それにしても「楽天Edyのバーコード決済です」と言われた方が分かりやすいような。楽天Edyでも、楽天ペイのアプリ決済(バーコード式)でも、貯まるポイントは同じ楽天スーパーポイントだ。スマホを取り出して決済するのに、楽天Edyと楽天ペイを呼び分けるというのも・・・。店員に申し出る時は、「楽天Edyのタッチで」か、「楽天Edyのバーコードで」の違いで済む気がする。
両方が使えるのは、コンビニでは17年9月時点でローソンだけだが、そのローソン店員がEdyとペイの区別を正しく理解できているだろうか。
スマホ決済の覇権を目指せるか? 二重ブランドで。
キャッシュレス決済のメインツールは、現状ではカードだが、やがてスマホになる。利用者のマジョリティがそうなるかは微妙なところもあるが、少なくとも今以上にマーケティングの主戦場になる。
そうなっていく過程で、強いスマホ決済サービスを持っているかどうかは重要だ。スマホ決済サービスの覇権争いは、これからの消費社会史(というものを想定すれば)の見どころの1つになる。
スマホ決済の覇権を掴むために、やはりEdyとペイの二重ブランドは好ましくないように思える。まして楽天ペイに二重の意味が含まれてしまっている。
ちなみにバーコード式のスマホ決済は急拡大中で、スマホ決済の主流になる可能性を秘めている。「バーコード表示式のスマホ決済、増加中」を参照。