らでぃっしゅぼーやの宅配、「時間指定なし・再配達なし」の合理性

 

宅配便の取り扱い個数が増加を続けるなか、ヤマト運輸も佐川急便も日本郵政も宅配料金の値上げを予定する。そのなかで、自然派食品のeコマースを展開する「らでぃっしゅぼーや」は、17年10月2日から無料配送枠の拡大に踏み切る。

これまで8,000円以上と設定していた配送無料枠を、5,000円に引き下げる。さらに、3年以上の利用と直近3ヶ月で3回以上の購入実績がある顧客は、購入金額に関わらず配送無料とする優待枠を設ける。

もっとも、これには定期配送品「ぱれっと」の購入を含むという条件がつく。また、従来は「ぱれっと」購入者の送料は購入額に関わらず無料だったが、今後は利用開始3年未満のユーザーの場合、購入額が5,000円未満だと送料が発生してしまう。

一部で新たな送料負担を課すとはいえ、トータルでは配送無料の対象者は20%拡大すると予測する。

 

送料無料枠の拡大、勝算はあるの?


 

宅配コストの適正化を名目に、宅配利用者の負担金額が上昇するトレンドに反して、らでぃっしゅぼーやは送料負担の軽減に踏み込んだ。

なんで、そんなことが可能なの?

会見では、配送代理店8社との協業による自社配送網があるからと説明していたが、腑に落ちないところがあった。

無料枠が拡大すれば、かなりの確率で宅配個数は増える。

宅配個数が増えれば、配達スタッフはより多く必要になるし、業務負担も増える。

配達員そのもののコストが膨らむなか、取扱個数の増加による売上アップだけで吸収できるの?

宅配業界では目下、荷物の増加それ自体が問題になっている。あえて荷物を増やして、勝算があるのだろうか?

らでぃっしゅぼーやの国枝俊成社長は、「配送料の値上げ表明が相次ぐ宅配業界に、一石を投じたい」と繰り返した。一石を投じることの勝算はあるの? そこに疑問が残った。

 

無理のない配達業務、その前提になること


 

一石を投じられる前提として、らでぃっしゅぼーやの自社配送網にはそれなりの余裕があるようだ。料金体系の変更で、2月末までに4億5,000万円ほどの売上増を見込んでいるという。年換算だと10億円前後になるだろうか。取扱個数の見込みが上振れしても、売上の増加で吸収できるとしている。

しかし、宅配業者の労務環境は悪化するのではないか。その負担を改善するために、ヤマト運輸などがたどった道を進むのではないかと思ってしまうが、配達の仕組みが違うことが大きいかもしれない。

つまり、らでぃっしゅぼーやの配達は「時間指定なし・再配達なし」だった。

不在の場合はどうするの? 注文時に顧客が指定した「留め置き場所」に、保冷剤など必要な処置をしたうえで荷物を置いていくという。

この割り切りがあればこそ、荷物の数量がそこそこ増えても対応できるのかもしれない。

宅配業務の負担として、いつも言及されるのが再配達の問題だ。荷物総数の20%に上るというから、宅配便5個のうち1個は再配達していることになる。

配達員は、配達ルートを決めて家を回るが、不在があるたびにルートの見直しが必要になる。クロネコも佐川も現場スタッフは献身的で、再配達の日時指定をしなくても再訪してくれる人もいる。

これに時間指定の縛りが加わるので、配送ルートの策定はますます複雑に、再配達が発生すれば新たな時間の縛りも生じてしまう。

それが「時間指定なし・再配達なし」だったら、どうなるか。

配達員は、最初に決めたルートを順に回れば、仕事が終わる。

利用者にとっては不便な面もある。しかし、不在にしていても荷物は届く。

 

だから宅配ボックスの環境を整えよう


 

再配達につながる理由はいろいろだが、大手は「不在なら持ち帰る」という行為を見直す必要があるかもしれない。配達員も受け取る側も、誰も持ち帰ることを望んではいないのだから。

当然ながら適当に置いておけばいいということではない。以前にも書いたが、宅配ボックスの環境を整えることに努力したらいいと思う。すでに進められている公共スポットの拡大はもちろん、自宅で安全に受け取る宅配ボックスの仕組み作りに取り組んでほしい。「再配達を削減する決め手。宅配ボックス普及の課題は?

 

ちなみに、らでぃっしゅぼーやの配送料金体系の見直しについては、9月15日発売の「食品商業10月号」に記事を書きました。配送無料枠の拡大による同社の戦略については、そちらをご覧ください。


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