紙を受け取るポストから、荷物を受け取るボックスへ

どの家庭にも設置されているポストは、郵便受けの名の通り、紙の郵便物を受け取ることを前提にしている。郵便じゃなければ新聞紙とか。いずれにせよ家庭のポストは紙を受け取るために設計されており、とうの昔に時代錯誤な設備に成り下がっている。

郵便受けの堕落 現状は外からやってくる紙ゴミの窓口

まず、ポストで受け取りたいものが減っている。

新聞紙の購読率は下がり、手紙が伝えていた私信のほとんどはEメールやSNSに置き換わっている。

いまや郵便受けに入っているものといえば、余計なダイレクトメールやポスティングされたチラシばかりだ。取り出してゴミ箱に直行という作業を毎日くり返さないといけない。現代において、ポストが日常的に果たしている役割の最たるものは、外からやってくるゴミの窓口だ。

望んでもいない紙ゴミを確実に受け取るポストは備えているのに、宅配便で届けられる受け取りたい荷物を、不在のときでも受け取れる設備は普及していない。

紙をベースとした郵便制度とそれを受け取るためのポストは、現代の生活ニーズとかけ離れて、むしろ厄介ごとを作り出している。だから時代錯誤の代物だと言う。



宅配物は増える。再配達も増える。

郵便受けに投げ込まれる紙ゴミとは異なり、宅配業者が届けてくれる荷物には、必要や嬉しさや喜びが伴う。ネット通販で購入したものだったり、親類とかの善意だったりする。

宅配便は受け取りたい荷物だけど、実際には受け取れないことが多い。

宅配便が受け取れないとき、無用の長物である郵便ポストには、荷物の代わりに不在者票が入っている。不在者票から再配達の依頼ができて便利?

違うでしょう。

不在時でも荷物が受け取れないことが不便だし、再配達は削減すべきコストなのだから。

2015年で年間36億個とされる宅配便の2割が再配達に回るという。宅配業者にとっては配送業務のコストが上積みされることになり、配送車のガソリンは浪費され、CO2が余分に排出されてしまう。コストを負うのは事業者だけではない。利用者はけっきょく、再配達込みのサービス料として2割分のやり直しコストを負担しているのだ。

再配達をいかに減らしていくか。宅配事業者は行政との連携で打開策を模索している。

宅配ロッカーやコンビニで受け取れて便利?
家で受け取れるに越したことはないでしょ

2016年5月、ヤマトHDはフランスのネオポスト社と組んで宅配ロッカー事業を立ち上げた。

公共交通機関の周辺など、地域の生活動線に認証機能やセキュリティ機能が付いたロッカーを設置し、24時間受け取り可能なインフラとして広げようとしている。

クロネコの再配達の時間内に受け取れない人は多く、せっかく手前まで来ている商品なのに、手にできるのは週末になるという人は少なくない。宅配ロッカーによって時間に縛られず受け取れることは、利用者にとって大きなメリットであることは間違いない。

ただ、路上で受け取る行為そのものは、実際には便利でもなんでもない。同じことは、コンビニ店頭での受け取りでもいえる。

自宅で受け取れないというシチュエーションは、自宅で受け取りたくないこととは違う。プライバシーや防犯上、自宅で受け取りたくないという人も少なくないが、それも問題はプライバシーや防犯であって、そこをクリアできるのであれば、自宅で受け取った方が便利に決まっている。

郵便受けで郵便物を受け取れるように、自宅の宅配ボックスで宅配便を受け取れるようになるといい。それには、宅配の荷物を受け取れるよう、前時代的なポストのあり方を再設計する必要がある。 

宅配ボックスの現状
マンションはともかく、戸建は微妙。

マンションなどの集合住宅には、荷物を受け取る宅配ボックスが設置されているケースが珍しくない。以前に住んでいたマンションでは、宅配ボックスが埋まって再配達という事態もわりとあったが、それだけ利用されているわけで、基本的に便利だった。

戸建用の宅配ボックスも市販されているが、入れ方・取り出し方がバラバラで、配達員が本当に入れてくれるか不安だし、ボックスに備え付けのハンコで捺印するプロセスとか、セキュリティ的にはさらに不安な感じだ。なぜこのような不安が伴うのだろう?

市販の宅配ボックスは、受取手だけの都合で設計されているところが問題だ。製品化の段階で宅配事業者を巻き込んでいないから、備え付けのハンコで配達員に捺印してもらうなどというセキュリティ的にアウトすれすれの(いやアウトでしょう)仕組みになってしまう。

宅配事業者も、家庭用の宅配ボックスのインフラ整備に積極的に関わって欲しい。公道の宅配ロッカーほど厳重なセキュリティはいらないはずだし、インフラへの投資コストは各家庭が負担してくれるのだから。そして究極便利な方法でもある。

宅配は、届ける側と受け取る側の共同作業で成立するものだ。宅配ボックスは双方にとって使い勝手がよく、共通のルールが基盤になっていないと機能しないだろう。


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