忘れ物防止タグ、紛失物が自ら居場所を語りかける時代

もう10年も前になるか、渋谷駅の券売機で定期券を発行し(私はまだ磁気カードを使用していた)、発券口から出てきたカードを取らずに去ってしまった。電車の時刻でも気にしていたのだろう。

帰宅してから気づき、駅で忘れてきたに違いないと思って窓口に電話してみると、そのコールセンターは沖縄だかどこだか離れたところだった。ただ、渋谷駅に保管してあることは確認できて、そこまで取りに行けという話になった。

当時の自宅から渋谷駅まで1時間はかかる。定期がないから、足代もかかる。それも会社の最寄りではない出先で購入したものだから、回収しても帰りの足代もかかる。残念なことだと思って渋谷駅まで行くと、私の定期は自宅の最寄り駅まで送ったと駅員から聞かされた。コールセンターとの連絡が全くできていない。

足代を払って無駄足を踏んで、微妙に親切ではあるものの連絡が徹底していないJRの対応を呪ったものだが、IoTの時代ともなると、紛失物の対応も変わろうとしている。

JRではなく小田急の話だが、17年7月3日から沿線の落し物防止タグ「MAMORIO」の導入実験を始める。

小田急線沿線内の忘れ物は、翌日には経堂駅前の忘れ物センターか、小田原駅・藤沢駅構内の3ヶ所に集約されるという。そこで一定期間保管した後、警察署に渡される。導入実験は、3ヶ所の保管所にMAMORIO専用アンテナを設置し、タグの位置情報を利用者のスマホアプリに届けるというものだ。MAMORIOユーザーの便宜を高めるという程度のものだが、数ある忘れ物防止タグの中で、沿線居住者にとってはMAMORIOを選ぶ動機が高まる。

MAMORIO専用アンテナは、すでに東京メトロの数駅、相模鉄道、東急電鉄や、神奈川の高島屋にも導入されている。

 

紛失する確率と、タグの価格・寿命のバランス

 

このMAMORIO、専用アプリを入れたスマホとBluetoothでつながり、一定の距離が離れるとアラートで通知される。最後に位置を確認した場所と時間が表示され、どこで無くしたかも確認できる。手元から離れたタグが他のMAMORIOユーザーとすれ違ったときには、その瞬間の位置情報を通知する。この場合、すれ違った方のユーザーには分からないようになっている。

MAMORIO 通知のイメージ

モノの位置を把握できるのは安心だ。Suicaがスマホに組み込まれた今となっては、定期を落としたとしてもスマホで位置情報は確認できるのでタグは不要だが、IoTになっていない物はある。位置情報が分かることで、警察に届ける以前に対処できることが増える。

ただ、MAMORIOの価格はそこそこする。メーカーの設定価格は税込3780円。たとえばAmazonでもその通りの価格になっている。ほかにも落し物防止タグの類はけっこうあるが、数千円はする。

MAMORIOの場合、電池の寿命は最大で1年、ユーザーによる取り替えは不可能。有償の電池交換プログラムを利用しなければならない。他のタグ製品の場合も使い捨てだったり、最も手軽な交換方法でもボタン電池だ。

1年くらいの寿命で、数千円をかけて忘れ物防止タグをつけるかどうか。紛失の確率に対する保険としては、私個人は掛け率が見合わない。高級バッグを持ち歩く人ならいいかもしれない。

電子タグの価格が高い。使い勝手がもう一つ。こんな話、流通分野でも聞いてきた。IoTは、まだ黎明期のようだ。


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