ラストワンマイルの遠過ぎる収支

流通業でいうところのラストワンマイルとは、商品を購入者の家まで運ぶプロセスを指す。

リアル店舗の場合、このラストワンマイルは購入者自身が担う。企業が考えなければならないロジスティクスは、店舗に届けるまでで完結していた。

eコマースが一般化し、購入者の自宅まで届けるプロセスが増えたことで、ラストワンマイルがロジスティクスの重要マターになった。このラストワンマイルを担当するのは、購入者でも販売者でもない。ヤマト運輸をはじめとする宅配業者だ。

購入から宅配までのリードタイム短縮など、eコマースを利用しやすいサービスが充実し、宅配の物量が増え続けた結果、17年4月末のリリースのように、ヤマト運輸が音を上げてしまった。

ヤマトはデリバリー事業の構造改革として5つのテーマを挙げている。社員の労働環境、基本運賃の改定といった項目があるなかに、宅急便の総量コントロールが含まれている。

現状の体制に見合った水準に宅急便の総量をコントロールしようというもので、大口の法人客には繁忙期の出荷調整や、複数荷物をまとめて配達する仕組みの構築、料金システムの改定などを提示している。

大口の法人客の中にはAmazonなどのeコマース事業者が含まれる。ラストワンマイルを担ってきたヤマト運輸が宅配物の総量をコントロールしたいと望むなら、eコマースの拡大にも足枷となる。サービスレベルはよくて現状維持、料金の改定や配達条件の変更などもありえるわけで、当面はこれまでの水準から後退する可能性の方が高い。

eコマースの愛用者は(私のことだが)、ヤマト運輸がパンクしないよう気を配らねばならない。ヤマト運輸ができないことは、佐川も日本郵便も取って代わることができない現状なので、消費者としてはクロネコを思いやるほかない。

 


店舗までのロジスティクスが、何より最適化されている

 

このヤマト運輸のつまづきは、店舗をゴールとするロジスティクスの合理性を再確認させるものだ。

リテーラーも、ネットスーパーで即日・翌日配送のサービスを広げようとしているが、サービスレベルを上げて規模を大きくしても収支は合わなくなるし、リードタイムの長期化などサービスレベルを落としても収支が合わなくなるという難しい事業になっている。

今のところネットスーパーの最適解は、赤字にならない程度で顧客に利便性を提供するという、事業としては消極的なゴールを設定することにしかない。

 

ラストワンマイルの克服は、SFの領域か?

ネットスーパーが事業として拡大する見通しは立ちそうにない。ヤマト運輸の現状が示すように、ラストワンマイルはニーズが増えて物量が増えても、スケールメリットでペイできるものではなさそうだ。

とりわけスーパーマーケットが取り扱う食品分野の場合、ラストワンマイルに挑むよりも、来店動機を高めて顧客の方から出向いてもらう工夫の方が優先順位は高い。ラストワンマイルの解決策は、今のところ見つかっていない。あるとしたら自動運転車によるロボット配達か。2年前よりはリアリティがあるものの、今のところSFの領域だ。

 

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