JCB、決済データの本格活用へ第一歩

クレジット決済の購買データは、膨大な量がストックされ続けているにも関わらず、データとしての活用は手つかずのままだった。キャッシュレス決済の中核を成すクレジット決済がそのような状況であることこそ、新興のフィンテック・ベンチャーが新しいサービスを仕掛ける隙となっていた。

ようやく、クレジット大手の一角であるJCBが、決済データの有効活用に踏み出す。

5月にスタート予定の新しい消費統計「JCB消費NOW」は、データ活用に同意したJCB会員のデータを基に、新たな消費の指標を提示する。2015年を水準に上下のブレ幅を数値で示すというもので、この方式は(基準年の設定を含め)政府の商業動態統計のスタイルに合わせている。

既存の統計と似た基準にすることで、リアルデータに基づいた正確性と、締日から15営業日でデータ公開に至る速報性を印象づけようとしている。政府統計の発表は月1回だが、JCB消費NOWは月2回の更新で、半月単位と月間のデータを提示する。

膨大な量を扱うデータマイニングと、そこに含まれるノイズを補正して妥当性の高いデータ解析を実現するのは、東大発のフィンテック・ベンチャー、ナウキャストの技術だ。JCBは自社のビッグデータを活用する新規ビジネスの創出に向け、約400社を調査して可能性を検討したという。そこから選出した、たった1社がナウキャストだ。同社には統計学の権威である東大・渡辺努教授が技術顧問として関わっている。

 

6業種で統計発表、なかでもEC(Eコマース)の消費統計に注目

公開するのは「総合」指標のほか、外食、ドラッグ・医薬品、ファミレス、ガソリン、ECの6種類だ。もちろん、JCBはもっとさまざまな業種別にデータを把握しているが、スタート時点では6つに絞り、利用者の要望を聞きながら対象を広げていくという。

業種別にもっと細分化したデータが欲しいのは当然としても、スタート段階でECが入っているのはクレジット会社の統計ならではの魅力だ。ECの決済方法としてマジョリティを占めるのは恐らくクレジット決済であり、それだけにEC全般の消費動向を示す統計は今まで存在しなかった。

JCB消費NOWの会員登録は既に始まっている。最初の統計発表は5月上旬を予定している。

https://www.jcbconsumptionnow.com/

 

クレジット決済の裾野が広がり、環境が整う

クレジット決済のデータを用いた消費統計がこのタイミングで実現するのは、やはり時代の流れだ。前提として、クレジット決済が幅広く浸透した事実がある。決済比率に占める割合は16年でも2割弱だが、かつてのように高額決済に偏ることはなく、日常のさまざまなシーンで広く利用されている。先に挙げた6業種(「総合」を除けば5業種)も、日常普段のものばかりだ。

クレジット決済の歴史は既に長いが、そうはいっても10年前にこういった統計を作るのには無理があっただろう。

また、クレジット情報はプライバシー的にセンシティブな領域であるため、活用に踏み切るには万全の仕組みを整える必要があった。今回の解決策はシンプルなもので、同意を得た会員のデータだけを分析することにしている。それでも、統計的に必要な最低限の母数は、もう確保できているという。

チェーンごとに区切られた会員カード情報や、電子マネー、より広範に使われる共通ポイントプログラムなどと比較しても、クレジット決済の利用領域は広い。このリアルデータが、新たな価値を生む情報資産として本格的に活用されようとしている。


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