流通各社は、なぜ独自(ハウス)電子マネーを導入するのか

電子マネーの本格的な普及は、やはりSuicaが端緒というべきで、じつに2001年までさかのぼる(といっても、当時は切符や磁気カードの置き換えに相当する電子切符だった)。それから流通大手のWAON、nanacoが誕生したのが07年だから、もう10年が経過した。

フェリカを搭載した非接触式のこれら電子マネーは、決済ツールとしての浸透度はまだ道半ばという感もあるものの、クレジットカードとは異なる「電子マネー」と言えば、ここらへんのことを指すという認識は広く浸透している。

電子マネーのビッグ3は、今も決済額を伸ばしている。成長ステージにあるといって間違いではないが、電子マネーのイメージは、ここにきて一段と多様化している。

Apple Pay以降、NTTドコモのiDや、JCBのQUICPayを使用するユーザーは増えているはずだし、ほかにもいろんなPayや、Suicaに倣った○○カ的なものがある。



 

あちこちにハウス電子マネー

スーパーマーケットでは数年来、独自電子マネーを導入する動きが盛んだ。ハウスカードならぬハウス電子マネーというやつで、要はそのチェーンでしか使えないプリペイド式の商品券(ギフトカード)なわけだが、商品券よりは気の利いた機能がついている場合が多い。とくにポイントカードと一体型のものが流行りで、利用者は電子マネーを使わずとも、今まで通り単なるポイントカードとして使用することもできる。

先行している汎用型の電子マネーがあるにも関わらず、なぜ今さら独自電子マネーがあちこちで誕生するのか。導入するチェーン側には、顧客に使ってもらう勝算があるのだろうかと怪しんでいたが、汎用型が広がったからこそ、ハウス型が台頭しているようだ。

 

汎用型は、手数料が導入のネックに

汎用型が広がるほど、それを導入したチェーンは手数料を持っていかれることになる。使われるほど負担が重くなる。そんなに電子マネーが使われるなら、自社でもやって手数料の支払いを抑制しようという動機が生まれる。

そのチェーンでしか使えない電子マネーなら、チャージした分はその時点で売上になったも同然だ。顧客は支払いをコミットメントした状態であり、そういった顧客には相応のボーナスポイントを付与して報いるのが常套手段だ。そうなると、顧客にとってもチャージするメリットが出てくる。とくに来店頻度の高いスーパーの場合、事前に一定額をチャージすることへの抵抗は少ない。どうせ何度か行くうちにそのくらいの額は使ってしまうのだからと考える。

導入するチェーン側と、利用する消費者側でメリットを分かち合える。ハウス電子マネーの広がる土壌は、両者のメリットのバランスの上に成り立っている。

 

汎用電子マネーに対する、非対称的な戦い?

ハウス電子マネーは、汎用型の電子マネーや、これから新たな汎用性を獲得しようとしている新興の電子マネーにとっては、いささか厄介な相手だ。利便性やユーザーの母数では圧倒できる。しかし、そのチェーンの限定的な買物で提供できるメリットとなると、汎用型では対応し切れない領域が生まれてしまうだろう。閉鎖的で不便のように思えるハウス電子マネーも、お得に買物できるというメリットがある限り、進んで囲い込まれる消費者は少なからずいるはずで、現に今も増えている。

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