自社サイトに掲載されたチラシは、チラシの用を足すか?

もう10年というもの新聞を購読していないので、折込チラシも見ていない。

もっとも、チラシを見ないわけではない。週末など買物に出かける先のチラシは、ネット経由で見てはいる。新聞紙に折り込まれたチラシとの接点がないだけだ。

ネットを介した情報提供でリアル店舗への送客を促すO2O(オンライン・トゥ・オフライン)、個人的には一昔前から完全にO2Oになっていた。同じような人は増えているどころか、もはやマジョリティではないだろうか。少なくとも朝の電車内で新聞紙を開いている人は完全なマイノリティだ。

折込チラシは、専業主婦がマジョリティだったバブル時代までの生活スタイルに合わせた媒体だ。取材で以前、そんな指摘を聞いた。特売情報のカタログ的な紙面を比較検討して買物に出かけるなんて、なるほど勤めのある有職主婦には困難だろう。独身男女にもチラシを眺めているような時間はない。チェーン各社が若い世代ほどチラシではアプローチできないと言うのは当然で、たんに新聞を購読する割合が少ないだけではなく、奇特にも新聞を購読していたとしても、わざわざチラシを眺めたりしない。

折込チラシを補完するため、自社のHPにチラシ情報を掲載するのが常套手段になっている。私もそのようにして特売情報をチェックしているわけだが、実はこのアプローチ、チラシの機能を倒錯させてしまっている。 



チラシの目的は、商圏内の浮動票の獲得

チラシは本来、エリア単位で配り、競合店に流れるかもしれない顧客を呼び込むためのものだ。

集客につながる決定打は何と言っても価格なので、チラシは基本的にセール品のカタログになる。ただ、わざわざ企業サイトに入ってチラシを閲覧するほどの顧客は、その時点ですでに囲い込めている、と言える。行く店は決まっており、そのうえでチラシ情報をチェックするのではないだろうか。少なくとも私は、行く店を決めてからサイトでチラシをみる。どっちにしても行くわけだから、実はチラシを確認しないことの方が多い。仕事柄、チェーンの特徴はある程度は分かっているので、その日の必要性や気分で行く店を決める。この商品が特売だから行こう、とはあまりならない。価格を気にしないわけではなく、行った先が高いと感じたら買わない。

折込チラシでは順序が逆になる。チラシを見比べたうえで行く店が決まる。チラシを比較検討する層は、いちいち個別の企業HPにアクセスして、自分が行く店の情報をチェックするなんて手間は好まないだろう。そういう人は企業HPではなく、シュフーその他のポータル的なサービスを利用するはずだ。

企業HPに掲載するチラシ情報が、浮動票の取り込みにつながらないとしたら、折り込みチラシの代替とするには痛すぎる欠陥だ。

 

折込チラシ1枚で顧客すべてに対応するのは無理

HP掲載チラシの残念なところは他にもある。店に行くことが決まっているカスタマーに対しても、価格で動く層と同じ情報を提供している点だ。

ロイヤルカスタマーとチェリーピッカーを十把ひとからげ、それがチラシ販促の実態であり、マーケティングとしては大雑把としか言いようがない。

企業HPにチラシを掲載するのが無意味とは言わない(私は現にチェックしている)が、不十分な施策ではある。折込チラシの最大目的である浮動票の獲得にはつながりにくいし、ロイヤルカスタマー向けの情報としては浅すぎる。情報の中身を変えることで、カスタマーの買物前の期待はもっと高まり、買上点数も増えるだろう。

折込チラシのアプローチが効果的な層もあるわけで、それはそれでやる必要がある。また、紙のチラシは見なくても特売情報を探す人はいるので、ポータル的なチラシ配信もなくてはならない。さらにチラシに関係なく来店する層に対しては、特売だけにとどまらない情報を提供するのが「おもてなし」になるだろう。

これらすべてを折込チラシの体裁で済ませようとすることに無理がある。折込チラシにそれほどの力を注ぐ価値があるとも思えない。今はまだあるとしても、かつてよりはないはずだし、これからも弱くなり続けるはずだ。

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