なぜ電子レシートか。便利? エコ? そんなことじゃなく。

 

レシートを紙ではなく、電子情報としてスマホに届ける。そんな電子レシートは、顧客にとってはかさばらずに整理できるという便利さがあり、店にとってはレシート用紙と印字代の節約になるというメリットがある。

ただ、それくらいのことでは電子レシートが普及していくモメンタムは強まらない。保管したくない顧客はレシートを捨てれば済むし、家計簿をつけるけど紙がかさばるのは嫌という人は、まめに処理する習慣ができている。買物時のアクションを変えてまで、レシートのデータをもらう気にはならないという人は多そうだ。とはいえ電子レシートを受け取るようになって初めて家計簿にトライするという人も実際には出てくるはずだが、家計簿のために電子に切り替えようという気持ちにはなりづらい。

つまり電子レシートは便利、というだけでは紙のレシートから置き換わることはない。電子化に合わせて、レシートの機能を見つめ直す必要があるようだ。

電子レシートのサービス事業者は、単に購買情報を提供するだけでなく、顧客と店に以下のようなメリットを提供することで利用を促す。

顧客には、お得な情報。

店には、顧客とのつながりを強化できる機能。

 

レシート情報をマーケティングに活用


 

東芝テックは、14年から「スマートレシート」の名称で電子レシートのシステムを提供している。利用者は専用アプリをスマホに入れてレシート情報を取得する。家計簿を補助する便利機能に加え、クーポンやスタンプカードの機能により、顧客に「お得情報」を提供する。

17年3月にはディスカウントストアのトライアルと組み、購入履歴を活用して商品やメニューを推奨する販促の実験を行った。この実験のために、利用者が提供データのレベルを任意に設定できるシステムを導入した。経済産業省も加わったこの実験では、購買データをマーケティングのリソースとして活用していくねらいがあった。

 

レシート送信は、アプリで、メールで、ビーコンで


 

タブレット型POSレジシステムを提供するSquareは、無料アプリ「Square POSレジ」の新機能として電子レシートを提供している。17年8月から新たにメッセージ機能を搭載した。

この「Squareメッセージ」、顧客にただお礼を言うためのツールではない。利用客は受信した電子レシート画面にあるボタンをタップすることで、店へのレビューや感想を送れる。店からの返信を希望するか・しないかも選択できるという。

 

レシート情報と一緒に、サービスの評価をアンケート

 

これはつまり、顧客の要望や不満を吸い上げる機能であり、店頭で「お客さまの声」などとして設置している投書箱をデジタル化したものだ。

紙に書いて投書箱に入れる従来のやり方は、顧客側は匿名になるし、店側は対応した結果報告として投書を店頭に掲示せざるを得なかった。これを見ると、個人的な不満・要望・評価のオンパレードで、投書していない人があえて見るほどの価値に乏しい。

Squareメッセージでは、顧客と店のメッセージのやり取りは、二者間だけで完結する。顧客から寄せられる意見や要望への応対はもちろん、購入履歴に基づいてクーポンの配信も可能だ。

Squareのメッセージは、メールまたはSMSで送信される。ほかにもメールシステムを活用した電子レシートとして、エイジア社とジェイモードエンタープライズ社による「レシートメール」といったサービスもある。

ジェイモードエンタープライズは、アパレル業界向けの販売システム、エイジアはメールサービスを中心に展開している。両社の得意分野を掛け合わせたレシートメールも、販促ツールとしてセールの告知やクーポン配信などの機能を備える。

アプリ、メール以外にも電子レシートの提供方法がある。スター精密社のAll Receiptsは、紙に印字されたQRコードを読み取るか、ビーコン(短距離通信の規格)を使った専用端末にタッチして電子レシートを取得する。

スター精密は小型プリンターのメーカーであるせいか、ビーコンはともかくQRコードを利用する場合、紙のレシートも提供する必要が出てくる・・・。同社のサービスでも、顧客に店舗の情報やクーポンを配信する機能は付いている。また、利用者が店舗の満足度を評価することもできる。電子レシートを通じて実際の利用者の声を吸い上げ、店舗の改善を図ろうとする考え方はSquareとも通じる。

 

電子レシートで顧客の声を吸い上げる


 

電子レシートは、スマホに購入データを届けるついでに販促情報を提供し、次の来店を促す。購入履歴に基づき、パーソナライズされた販促情報(クーポンなど)を提供できれば高い効果を期待できる。単なるプロモーション通知では黙殺される可能性もあるが、購入履歴というmyデータだからこそ、受信者は確認してくれる。

レジ精算のときに必ず手渡され、結果として顧客の目に触れやすいレシートは、紙に印字された場合でもメディアとしての訴求力が注目されていた。

コンビニのレシート下段にはさまざまな告知が付いているし、スーパーのポイントプログラムが規定に達したとき、割引クーポンが印字されるのも多くはレシートだ。カタリナ マーケティング ジャパンが提供する「レジ・クーポン」のように、リアル店舗に広く普及したクーポン発券システムもある。電子レシートに置き換わっても、精算時にレシートと一緒にクーポンを手渡すというアプローチに変わりはない。

レシート&クーポンは電子化されたからといって目新しい機能ではないが、スマホを活用することで目新しいのは、顧客の声を吸い上げ、それに応える仕組みを備えている点だろう。レシート情報のやり取りで顧客とのつながりを深める。それこそは紙に印字したのでは実現できない、電子レシートならではの機能だ。


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