Amazonフレッシュの現在地。生鮮流通の実力は?

Amazonによるホールフーズの買収が理に適っているのは、生鮮品を宅配するよりも店に来てもらう方が物流的に合理的だからと書いた。ネットで注文して配送拠点から宅配する方法では、スーパーの本質的な脅威にはなり得ないとも書いた。Amazonが食品スーパーを経営して、何がどうなる?

ただ、Amazonは実際に生鮮品を提供するネット通販「Amazonフレッシュ」を運営しており、国内ではまだ対象エリアを広げている。このサービス、以前は都内6区域での展開だったが、17年6月時点では23区中の18区に狛江市、調布市を加え、さらに千葉県の市川市、浦安市、神奈川県川崎市に広がった。

Amazonフレッシュは、スーパーのリアル店舗にどれほど脅威となるのか、ならないのか。現状のサービスレベルを、品揃え・価格・使い勝手の3つの切り口から検証してみる。

 



 

品揃え:食品1万7000品は驚異。惣菜に弱み。

 

Amazonフレッシュで取り扱う食品は、公式発表では1万7000品以上となっている。日用品やベビー、ペット用品といった非食品を含めると17万品以上という。

日用品の多さはさておき、食品で1万7000品以上というのも、かなりの数だ。大型のスーパーでも食品だけで1万品がせいぜいのところだ。野菜は1個から、カボチャなど大きな野菜は4分の1カットでも購入できる。

魚や肉は冷凍だけでなく、マグロのサクなどチルド帯で運ぶものもけっこうある。生鮮品のサプライヤーはさまざまだが、野菜は八鮮屋のものが目立つ。魚の調達先はいろいろで、ダイエー子会社のアルティフーズも提供している。アルティフーズといえば、MAP包装(ガス置換)技術で鮮魚の賞味期限を伸ばす設備を有している。なるほどと思った。また専門店として、魚の北辰や人形町今半が商品を提供し、グレードの高い魚や肉も揃える。

冷凍の魚や肉を扱えるのだから、もちろん冷凍食品やアイスも運ぶ。生鮮・日配・加工食品の品揃えではスーパーのリアル店舗を凌駕するが、昨今の伸長カテゴリーである惣菜の取り扱いはない。出来たての惣菜は運べない。ネット通販の苦しい点だ。

 

価格:リアル店舗に勝つ道理がない

 

高いことはないが、リアル店舗のスーパーより安いわけではない。

賞味期限の短い生鮮や要冷品はセンターに大量ストックするのには向かないし、リアル店舗ほど量をさばくのも難しい。もしリアル店舗ほど売れたとしたら、今度は運ぶのが難しくなる。何時に届けてもいいなら話は別だが、届けて欲しい時間はたいてい重なるものだ。生魚が欲しいとすれば、なおさら届ける時間が大事になる。

生鮮品を宅配しようとする限り、どうにもスケールメリットが出せない。規模の経済が働かなければ、価格が下がるはずもない。Amazonといえば、家電でも日用品でも安く買えることが魅力だが、食品ではそうもいかない。

 


 


 

使い勝手:配達料の足かせ、6000円の壁

 

宅配では届ける件数に限りがある。そこで単価を上げて効率を高めなければならない。

Amazonフレッシュは、購入金額6000円以上で配送料がタダになる。それ未満は配送料500円を取られる。1回の購入で6000円の買物は、簡単にはできない。スーパーの客単価は、平均で1500円もいかない。これだけでも気軽に使えるとは到底いえない。

Amazonフレッシュを利用できるのは、年会費3900円を払ったプライム会員だけで、しかもフレッシュ月会費として毎月500円が必要になる。たくさん利用しなければ勿体ないが、頻度を増やそうとすると、6000円の壁がますます高くなる。しかし6000円に達しなければ配送料で500円を払わなければならない。

日常的に使用するスーパーの感覚では、Amazonフレッシュを使い続けるのは厳しい。所得が高く、多忙な人なら予算の問題はクリアするとしても、多忙だから受け取れるとは限らない。要冷品が含まれる以上、宅配ボックスに入れてもらうわけにもいかない。

宅配時間は、午前8時から深夜0時まで、2時間刻みの指定範囲で届けるという。注文から最短で4時間というから、さすがAmazon。

オーダーから宅配までのスピードは瞠目すべき水準ではあるものの、4時間も待つなら近所のスーパーで用は足りる。4時間後に、確実に受け取れるように待ち構えていることが難しい場合もある。

それなら1時間以内ならどうでしょうと、Prime Nowという別のサービスでは東京・神奈川・千葉の一部エリアを対象に、生鮮だけでなく惣菜の取り扱いを始めた。1時間なら出来たてを届けられる! 確かにそうだ。

しかしこのサービス、最低購入金額は2500円で、1時間以内の配送には890円が別途かかる。そういうニーズもあるでしょう。ただ、内食市場のマジョリティにはなりえない。

Prime NOW 惣菜リストの一部

 

Amazonフレッシュの現状は、スーパーの脅威となるか? についての結論

 

リアル店舗のスーパーとは、用途が違う。ほとんどの顧客にとって、Amazonフレッシュ(Prime NOWを含め)は、日常の買物をする選択肢に入らないだろう。

ただ、リアル店舗が運営するネットスーパーには、脅威になりそうだ。ネットスーパー市場に話を限るなら、Amazonは最有力のプレーヤーになりうる。


Pocket
LINEで送る