Amazonが食品スーパーを経営して、何がどうなる?

Amazonが米国のスーパーマーケット、ホールフーズを買収する。ホールフーズといえば、米国やカナダ、英国で460店以上を展開し、16年度の売上は1.7兆円に上る巨大スーパーだ。規模もさることながら、1978年に創業した同社は、米国のナチュラル&オーガニック市場を牽引してきたチェーンとして日本の業界関係者にも知られている。

もっとも、最近はクローガーなどが同じ路線を強化し、以前よりも窮地に立たされていることでも知られていた。

ホールフーズの現状はさておき、Amazonは1.5兆円もの買収費用をかけ、食品分野に本気で取り組む姿勢を示した。日本でもこの手法を用いる可能性はある。Amazonがリアル店舗を運営することに、どんな意味があるだろうか。

 

 

やはりeコマースでは食品分野に切り込めない?

 

1つは、生鮮品や温度管理が必要な商品の物流に関して、リアル店舗にストックする以上に合理的な方法はないという事実だ。温度管理が必要なものは、顧客のそばにストックしなければ供給できない。巨大な物流倉庫から、トラックを飛ばして広域に運ぶことには限界がある。そのようなeコマースの物流方法では食品市場を攻めきれないと、Amazonはある意味で見限ったのだろう。

このことは、食品スーパーにとっては朗報であり、悲報でもある。

朗報というのは、eコマースがいくら発展しようとも、食品スーパーの本質的な脅威にはなり得ないことだ。ロジスティクスの合理性はeコマースよりも店舗にあるのだから、競争を続けて負けるはずがない。

悲報というのは、リアル店舗が取り組んでいるネットスーパーも、それ単独で大きな利益を生む事業になる見通しは乏しいことが再確認されたことだ。

温度管理が必要な商品の物流は、店に運ぶまでのプロセスは合理化できるものの、各家庭に運ぼうとすると回収の難しいコストが発生してしまう。Amazonがホールフーズと組んで、そりゃ宅配機能を強化するかもしれない。しかし、届けない方が利益は残るかもしれない。

今回の統合は、宅配のラストワンマイルの課題を克服するものではない。むしろ、ラストワンマイルをやっていたのでは生鮮市場に食い込んでいけない事実を示すものだ。

 

Amazon傘下で、店の情報開示は進むか

 

リアル店舗がAmazonの傘下に入ることで、期待できるのは宅配よりも、顧客とのコミュニケーションの充実だろう。

セール情報の提供1つを取っても、Amazonはリアル店舗よりはるかに優れている。リアル店舗のセール情報はチラシに掲載されているが、チラシの内容はすべての顧客に向けて作られたもので、自分に必要な商品の価格は、店に出向くまで分からないことがほとんどだ。「すべての顧客に向けた」、と言うのも正確ではないかもしれない。取引先との商談の結果、いい条件が出た「特売発注書」と呼んだ方が実態に近そうだ。

Amazonとリアル店舗の情報発信を比べたとき、最も大きな違いは店舗の場合、行ってみるまで商品の有無も値段も分からないところだ。店に行ったけどない、となったときのダメージは大きい。

すべての在庫情報を明らかにし、価格を示す。それをやっているのがアマゾンであり、ブラックボックスになっているのがリアル店舗だ。Amazonと食品スーパーが組んで、この点だけでも改善されたら、そのスーパーはとても使いやすい店になる。

 

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